ハンドベルの構造は楽器にしては非常に単純な構造の部類に入…るとおもいます。大まかにいって三つの部分からできています。それぞれキャスティング(鐘)、ハンドル(取っ手)、クラッパー(振り子)です。もっとたくさんの部品から作られてはいますがほぼ全てこの三つのどれかに収まります。構造はメーカー毎に異なりますが、この三つについてはおそらくどのメーカーの物でも共通しています。

ハンドルとキャスティング
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キャスティング(鐘)
キャスティングは英語の casting (鋳造、鋳物)のことです。何故日本語でキャスティングとカナ発音のものが定着したのかは良くわかりません。名前の通り、青銅を鋳型に流し込んで作った固まりを削りだしてつくっています。ハンドベルで一番手間がかかっている部品ですのでちょっとだけ作り方を紹介しましょう。
金属の鋳造品は身の回りにはそうそうないと思います。理由は簡単で、製造が難しいのです。日本で有名な青銅の鋳物は奈良の大仏です。他に身の回りにある物ではノートパソコン (MacBook Air)とか。Sonyのウォークマンは昔マグネシウム合金の鋳造でしたね。見えにくいところにはたくさんあります。ボイラーとか自動車のエンジンとか。
鋳造の方法ですが、(1) ベルと同じ外側形の木型を用意して、(2) それを使って金属の枠の中に砂で鋳型を作ります。(3) 木の型を取り出し、(4) 鋳型に型に青銅を熱して溶かした物を流し込みます。青銅の融点は1080度前後と金属にしては低いのですが、均一に型に流し込むのは大変なのです。ひびや割れ、さけ目ができたりすぐします。世界最大のベルであるツァーリ・コロコル(露: Царь–колокол, モスクワ 160トン)も火災の際に割れてしまっています。目に見えるものだけでなく、振動させて音をならすためには見た目の何倍もの精度での均一さが要求されます。それには型を作る技術、流し込む技術、冷やす技術、鋳型から取り出す技術、どこをとっても大変で、高温で、デリケートで、難しい作業なのです。表面を滑らかにした鋳型を崩さずに炉まで運ぶ作業は、ロボットには最後までできない作業と言われています。

キャスティングの作り方概要
冷えて固まったら(5) 枠からベルの形になった青銅を取り出します。その後、(6) 内側を削り出して肉厚を決めます。各音毎に異なるカーブの型を用いてかんぴょうの様に余分な金属部分を削り取るのです。この工程で大体の音程が決まります。この時点でモールドやクラックがある物は捨てられ、再び溶かされて再鋳造されます。だいたい5割のベルは再鋳造に回ります。現代でも歩留まりはとことん悪いのです。
このあとは磨きの行程です。バフがけと呼ばれるヤスリがけを行います。ひらたく言って表面をつるつるにする作業です。この工程では音程はあまり変わりませんが音質が丸くなります。いい音を出すのに最適な形は鋳造した物ごとに一定ではありません。ひとつひとつに最適な形があるのです。その形に近づけるためにマルマークやシューマリックはこの行程以後手作業で行っています。機械もあるにはあるのですが、均一に削ってしまうためいい音のベルにならないので、年に一度動かすか動かさないかだそうです。
他の部品を付けて、手と研磨剤でさらに削っていき、他の部品との整合をとったりします。このへんは見てもただ拭いている様にしか見えない程度にデリケートです。
以上でキャスティングの完成です。キャスティングで音の質が決まるため、メーカーはほとんどの資金をここにつぎ込んでいます。キャスティングはメッキも塗装も無い削りだしの金属ですので、錆びますし、固い物で叩けばへこんだり、削れたり、ひび割れたりします。脂と湿気と温度変化には弱く、汚れも放置すると表面にどんどん埋まっていきます。演奏者はメンテナンスの意味でキャスティングを研磨剤で時々磨きます。属にベル磨きといいますが、磨いた直後、ベルは白銀色をしていますが、数分も経たないうちに表面が酸化して黄色っぽくなります。
そんなわけでキャスティングをぶつけたり、落としたり、素手で触ったり、水をかけたりするのは厳禁です。手の脂や汗がキャスティングに付くのを防ぐため、ハンドベルの演奏者は手袋をして演奏します。手袋は様々な物が使用されていますが、主に実用性と価格、洗濯のしやすさから綿の手袋を使用するチームが多い様です。
ハンドル
ハンドベルのハンドルは取っ手に見える部分、ベルの外側に出ている部分です。取っ手に見えるというか日本語で言うと取っ手です。マルマークとシューマリックでは樹脂製、ホワイトチャペルでは革製のハンドルになっており、楽器なのにあろうことかいくつかネジ止めされています。ネジ自体は悪いもんじゃないですが、ネジは振動で緩むのです。楽器は振動して音を出す物です。つまり、ハンドベルは演奏し続ける限りずーっと調節をし続けなければいけません。しない人も居ますが楽器の寿命が縮みます。音も変わります。
ハンドルの特徴は、あんまりないのですが握ったときに少ししなって手になじむ様に作られています。また、ハンドルは平面の板状の物を曲げて作られており、板の平らな面が上を向く様にして置き、持ち、演奏します。手前側にはそれっぽいマークが入っています。
もともとそれを狙ったわけではないでしょうが、ハンドルが板状のでできているのにはもう一つ理由があります。それはハンドルの側面、板のへり部分が平面になり、ベルを二つ組んで持つことができるのです。
樹脂ですので、金属のキャスティングよりもよほど傷つきやすいですし、ひどい扱いをすれば折れたり割れたりひびが入ったりもします。キャスティングと異なり傷ついてもさほどダメージが無い点は大きく違います。しかし交換部品である事に代わりはありません。キャスティングは効果なのでハンドルとクラッパーを交換してベルを使い続けます。
ハンドルとキャスティングの間に円盤が挟まっていて、ハンドルガードと呼びます。ハンドルガードはハンドルを手で持つ際に手がキャスティングに触れない様にするためのものなのですが、細かい説明は割愛します。
クラッパー
クラッパー (英語: clappeer)は外側からは見えない部分、キャスティングにあたる振り子の部分で、楽器屋さんの用語では舌(ぜつ)と呼ばれる部分です。てこのついた金属棒の先端に鐘を叩くゴムや皮、布、紐製の鎚がくっついています。いろんな素材を書きましたが、一つの楽器で全部を使っているのではなく、メーカーやベルの音程によって異なる物が使われています。なかにはワンセットの楽器としてどーなん?と思うほど違う音質の組み合わせもあります。
ここがハンドベルのイングリッシュハンドベルたるゆえんなのですが、クラッパーは揺れる方向が一方向に固定されています。「てこのついた」と表現しましたが、一般的な部品名称では蝶番が一番近い物だと考えています。実際、蝶番を組み込んだハンドベルも楽器が近代化される間には存在しました。
クラッパーの触れ具合はスプリングという樹脂やゴムや皮でできた部品で固さを調節します。これがまたネジです。ハンドベルを構成する部品の中ではこのスプリングが一番の消耗品です。
鐘にあたる先端部分ですが、クラッパーヘッドと呼びます。単純ですね。二大メーカーのシューマリックとマルマークはそれぞれ異なる方式で、ベルにあたる部分を回転して固さを変化させることができる様になっています。この部品はメーカー毎にほんとに様々で、普通にハンマーの様なものもあれば、毛糸のボールの様なものもあります。形状も素材も様々ですが、日本で見られるのはおもに二大メーカーの物ばかりです。
結合
この三つを組み合わせてベルができています。ものすごく単純で作りはできた当初(1600年代)からほとんど変わっていません。素材と部品の結合部分が近代化されただけです。近代化してしまう楽器もそう多くはないですが音階系打楽器は割と近代化が進んでますよね。ティンパニ、ビブラフォン、などなど。だからいい、とは思っていません。バイオリンとかピアノぐらい完成した楽器になってほしいのです。音以外素人はいじるとこなし、というところまではまだまだほど遠く、さらに数百年かかると勝手に考えています。